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自分はただの道具だということ。
道具に感情は必要ない。
死に怯える人へ、熱く燃えさかる炎の塊を幾度となくぶつけてきた。
その度に少女は痛感した。
ずば抜けた火炎能力は、人を殺めるために授かったものではないんだと。
゙史上最年少のS級戦士゙
そんな褒め言葉はいらない。
最高級の商号を持つ戦士、その理由で常に第一線へと配置されていた。
殺めた人々は数知れず。
それでも、慣れる事なんてなかった。
二度目の風があたりを包む。
今度は、強風と言った方が正しいのだろうか。
王国の灯に加勢をかけて、更に勢いを増していく。
…海だ。
と、とある名を思い浮かべた直後、耳慣れた声が少女に届く。
「やっと、終わったな…」
少年だろうと憶測出来る声の主は、疲労と哀しみを含んだ声音で少女に語りかけた。
少女は静かに振り向く。
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