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海という名の銀髪の少年は、右目に眼帯をしていた。
この戦争で失った、右目だ。
少女は泣いていた。
静かに音もなく、幾重の涙が頬を伝う。
辛かった。苦しかった。
人を殺してきた自分が、何を被害者面しているんだと感じたが、溢れる涙はどうしようもなかった。
少年は何も言わずに少女の横へ寄り添った。
2人の腕が少し触れるくらいの距離。
「もう、無意味な戦いは終わりだ」
少女の方を見ずに、優しく頭を撫でるのは彼の精一杯の気遣い。
その優しさに、少しだけ傷が癒えたような気がした。
戦争への終わりは、もうすぐそこまで近付いている。
朝日が昇りはじめた。
柔らかな光が辺りを包み、暖かな陽射しが丘の上まで差し込んでくる。
それとほぼ同時。鐘の音が鳴った。
厚く重みのある、ゴォーン、という断続的な音が響きわたる。
降伏の鐘の音。
長い戦争は、終わりを告げた。
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