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「……これは、どう考えてもこちらの方に非があるようだな」
周囲を見回し肩をすくめた将軍は、さして気を悪くしたようでもなく、むしろ面白そうに呟いた。
「いいだろう。お前の実力とやらを存分に試して、そして世界とやらを護るがいい」
「――っ。ありがとうございます!」
その合格通告に喜色満面で礼を言うと、勢いよく頭を下げた。そんな試験番号二十四番に、ガダルの肩に肘をつき、様子を見守っていたローファスが声をかけた。
「――て、まとまりかけてるとこ悪いんだけど、俺からも質問したいんだけどいいかな?」
「なんでしょうか?」
「お姉さん、本当にこのヘスティーナ将軍目当てじゃないの?」
「は?」
「ローファス!」
試験番号二十四番の疑問の声と、鋭い将軍の声が重なる。
「だぁってさ、今でこそそうでもないけど、多かったじゃないっすか。女の子なのに、同じく女の『ヘスティーナ王女殿下』をお慕いして王国軍まで押しかけてきた子たち」
「丁重にお引き取り頂いたがな」
ローファスの言を引き継ぎ、ガダルが言う。
周囲の兵士たちもうんうんと頷いている。
「この子がそうじゃないって言質を取っておいた方が良くないですか?」
「それはそうだが……」
「て、えええええ?」
突然、試験番号二十四番が素っ頓狂な声を上げた。
「女性の方なんですか!? て、王女殿下!? うっそぉっ」
声を上げてから、自分の不敬に気づいたようである。試験番号二十四番は急いで頭を下げた。
「ぜんっぜん気づきませんでした!」という言葉がさらに不敬を塗り重ねていることには気づいていないらしい。
「……これは、私目当てではないな」
けれどヘスティーナは、気を悪くするどころか新鮮な反応に感嘆しながら呟いた。
「ええ。そのようですね」
「というかむしろ、この国で戦女神・ヘスティーナ将軍、あるいは王女殿下を知らないって、もぐりじゃないっすか? 下手な男よりも男らしく、剣を振るう姿はまさしく舞うがごとくで、白い歯が光る笑顔は百万リピル、とまで言わ……」
「いい加減にしろ」
言葉を遮るように、ヘスティーナはゴンッと、ローファスの頭を殴った。
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