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菊江の葬儀は、佐和子が喪主に立ち、恙なく執り行われた。
菊江も長い寝たきり生活であったこと、義之が病床にあることから、どこにも告知はせず、家族とごく近しかった人たちだけの、小さな葬儀だった。
炎天下、長く続く読経に、妊婦のために椅子に座った美希の足はだらしなく開き始め、ぱたぱたと内輪や扇子を扇ぐ音が耳についた。
小さな棺に納められた菊江は、白い花に飾られて、最後は煙と灰になる。
竹の長い箸で拾い上げる骨はほとんど形をなしておらず、火葬場の担当者が、灰と一緒に菷でかき集めていた。
白い真新しい布で骨壺を首から下げた佐和子は、死に化粧を施された菊江より、一層生気のない顔色で、終始じっとうつむいたままだった。
宿替えする前の更木の位牌は、49日まで自宅の祭壇に置き、納骨はセットでその日中に済ませてしまう。
何事も簡略化する催事に、どこか物足りなさを感じたのも事実だった。
「――おばぁも、焼いたらこんな小さなるんやな……」
納骨する時に、ぽそりと直樹が呟いたのが、妙に印象的だった。
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