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宛のない自問自答を繰り返し、ただひたすらに、学校という檻の中で寄り添って時間を重ねてきた、片割れ。
自分は間違えたのだと、平たい腹を撫でていたあの空虚な眼。
「志緒……志緒――…」
「会いたかったの、桃ちゃん。佐伯くんにおばあさんのこと聞いて、どうしても桃ちゃんに会いたかったの」
「志緒……好きや――…」
「――知ってるわ」
たたきに崩れるように膝をついて、志緒の腹に額を押し付ける。
擦り付けるように、何度も。
この腹に宿していたはずの命は、どこかに消えた。
菊江が旅立ったどこかと、同じ場所に。
始まることなく終わった命。
全うしたのだろう命。
美希のだらしなく開いた足の間にも、これから始まろうとする命がある。
佐和子にも、直樹にも。
義之にも。
命がある。
生きて、生きて、生きてきた。
この、18年間。
生きて、生きて、生きている。
今、この時を。
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