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佐和子は直樹に促され、自室で横になったようだった。
志緒、純平、そして遥とを、菊江の部屋に招き入れる。
友人だと直樹に告げると、遥を見ていぶかしげに眉をひそめたのが、なんだかおかしかった。
遥はいつもの黒いスーツで、飄々と頭を下げる。
このスタイルの理由を知りたいと思ったことを思い出していた。
「――クリスチャンやのに、かまへんのですか?」
「僕は僕の宗教を持っているけれど、人の死に礼を尽くすのに、宗教は関係ないよ」
遥は菊江に深々と頭を下げ、胸元で十字を切った。
「少し、痩せはりましたね、桃さん――」
「急やったから、なぁ」
「ちゃんと食べて寝てますか」
「あんた、お母さんみたいや」
笑おうとして、失敗する。
純平が困ったように、桃香の手を握った。
汗ばんだ感触が、なんだか懐かしいと感じていた。
「桃香ちゃん、お茶持ってきたけど――」
「美希さん、すんません」
「今晩も、泊めてもろてかまへんかしら。あたし、こんな体でしょう? 今から帰るの、ちょっとしんどいわ」
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