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 直樹が美希を連れて出て行ったのは、それからすぐのことだった。  線香の臭いの充満する古い家屋に起きている人間は、桃香と洋介、遥たちだけだった。  初めて会う遥たちに気後れしたのか、洋介は部屋に閉じ籠ったまま出てこない。  今日はお参りに来ただけだからと腰を浮かす彼らと離れがたく、桃香は洋介の部屋の襖を開いた。 「――夕飯、どうする?」 「お姉ちゃんは、友達といたいやろ。かまへんから」 「なんかとるか?」 「お腹空いてへん。友達とゆっくりしいよ」 「あかん」  ばたばたとして、朝は食べることができなかった。  昼は簡単な会食が用意されていたが、腹のどこに収まったか定かでない。 「簡単に、作るわ。待っとき」  ためらうようにうなずくのに少し安堵して居間に戻ると、純平が緊張した面持ちで辺りを見渡していた。 「――落ち着きないなぁ」 「そんなん言うたかて、緊張するに決まってますやん。桃さんの家なんて」 「なんも珍しいことないやろ。――ご飯、食べてくか?」
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