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 家族、ということ。  清も濁も内包した集合体。  直樹もまた、新たな集合体に片足を踏み入れ、二足のわらじでなんとか立とうとしている。  熱したフライパンに油を流し入れ、刻んだ野菜を放り込めば、ぱちぱちと弾ける水分が、エプロンを忘れた制服に染みを作る。  機械的に腕を動かしながら、自分の傍らを離れようとしない洋介が、その手元をじっと見ているのに気づいた。 「お母さん……具合、悪い?」 「疲れてるだけや」 「お父さんも、そうやったんでしょう……?」  消えそうなほど、か細い声だった。  首を傾げて顔を覗き込めば、制服のスカートを掴まれる。  うつむいた前髪が揺れていた。 「お父さんも、疲れて、病気になったんやないの……?」  油と、炒められる野菜の甘い匂いと、籠る熱気。  小さな換気扇だけでは、入れ換えられないほどの。  背中を流れていく汗。  ひやりとしたその感触に、襟を正す。 「なんで……なんでお父さんは――お姉ちゃん、に、あんなことしたん……!」 「洋介」 「なんで誰も知らんの? お母さんも、お兄ちゃんも?」 「洋介……!」
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