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平成23年春──
私、各務 桜花は16歳になった。
それに伴い桜花の家族は慌ただしく〈結婚式〉の準備をしていた。
まだ顔も見たことの無い男との結婚に桜花はうんざりしていた。
高校にも入れずに、生まれたときから決まっていた自分の一生運命、
いやだとも言えずに過ごしていた時間も、もう少しで終わってしまう。
「桜花ちゃん、」
一つ年上の姉、京子が突然話しかけてきた。
「京子ネエか、どうしたの?」
「桜花ちゃん、ごめんなさいね……私の身体が弱いばかりに、こんなに早く結婚させる事になってしまって」
長い栗色の髪を振り乱しながら、泣く姉の姿を見て桜花の心はズキリと痛む。
顔さえ見たことはなくても、結婚相手は姉の好きな人だから。
「京子ねえ、泣かないで、お願いだから。
京子ねえが泣いてると……私まで悲しくなっちゃうから、ねっ?」
「桜花……ちゃ」
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