115人が本棚に入れています
本棚に追加
管理人と穂乃花は、何があったのかわからず…お互い顔を見合わせた。
その場の管理責任者として、残された3人の安否が気になった。
雅幸の吐き捨てた言葉とそれ以外のメンバーの様子を照らし合わせると、どうやらここは本当に出る場所、らしい…
廃屋ホテルから、黒髪の少女がゆっくりとした足取りで戻って来た。
闇に覆われた様な彼女の姿は、管理人のジープにかなり近い距離まで、はっきりと捕らえる事は出来なかった。
管理人は直感で何かの違和感を感じ始めていた。
穂乃花は少女に「大丈夫だった?」と心配して声を掛けている。
黒髪の少女はゾッとするような低い声で言った。
「…残念ながら、逃げられた。…貴方達も早くここから去った方がいいですよ…」
管理人の、頭の中で何かアラームが鳴り響き始める。
「穂乃花、早く車に乗れ。帰るぞ!!」
「え?でも、まだ信夫さん達が…」
「いいから!!!」
管理人は真っ青な顔をして、穂乃花を車に押し込んだ。
黒髪の少女に、最後に声を掛ける。
「なんだかバタバタしちゃって、君の名前を聞きそびれちゃったけど」
少女は無表情に答えた。
「ハンドルネームは、∬忍∬です。」
頷いた管理人は、少女への別れの挨拶もそこそこに、ホテルを後にした。
―――駐車場には、黒髪の少女と少女のバイクだけがぽつんと取り残された―――
最初のコメントを投稿しよう!