オアシス

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オアシス

そいつはハゲ散らかした頭で、俺たちの雑談をいつもニヤニヤしながら聞いていた。 ビヤ樽のような体躯で、年齢は40~50といったところか。 古参の常連からは「おやっさん」とか呼ばれてたんだけど、 俺はそいつが時代に反抗するかのように「オアシス」って沖スロを打ち続けていたのが強烈に印象深かったので、敬意を込めて「オアシス」ってあだ名を付けた。 オアシスさん、って早口で言えばおやっさんに聞こえないこともなかったし。 オアシスは他の常連からも軽んじられているわけじゃなかった。 たまにオアシスがボソッと話す言葉は、そのほとんどが的を射ていたからだ。 今日はあのシマが出るだろうな、とか某店のイベントは信用できる、とか、そういった類の言質ばかりだったけども。
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