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──んー。
暇だなあ。
することないなあ。
すっごい暇。
どれくらい暇かって言うと平山さんくらい暇。
あ、間違えた。ヒマラヤ山くらいだった。
……とかはどーでもいーんだけど。
私は、下界を見下ろした。
地図によると、そこは日本らしい。
らしいっつーか、この辺が私の管轄なんっすけどー。
なんでだろう。
ここでは何度か仕事に来てるって言うのに全然記憶に残らない。
憶えてると言えば、仕事毎に変わるゆーしゃ様くらいなんだけど、覚えてるってもみんな案外簡単に死んじゃったからなー。
魔王倒す寸前で死んじゃうんだもん。
リアルにコンティニューはありませんよーって忠告しても死んじゃうんだから救いようがない。
これで何度世界が滅びたことか。
付き合わされる私たちの身にもなれっつーんデスよ。
ったく、私だって毎度頑張ってんのに。
どーしてついてきてくんないかなー。
「そうやってキョドってるからタマとられるってのに」
「こらこら。タマとかタマタマとか、女の子がそんな汚い言葉をたまたま口にするものじゃありません」
「うわっ、ミカ様」
後ろからの声に振り返ると、そこには私の上司の上司、ミカ様がいた。
翼で飛んでいる私とは違い、彼女はフリーで直立浮遊とかしちゃう大物だ。
クリーム色の腰まである髪が風に揺られて優雅になびく。
外見だけではかなり神々しい。
「いえ、ミカ様の方が私よりも断然言っちゃってますよ……」
ま、あくまで外見だけだ。
中身は中年親父顔負けの下ネタとセクハラが大好きな恐るべき美痴女である。
さらに言うと、任意で肉体年齢を変えられるのでロリでも女教師でもあらゆるプレイ(しかしミカ様は常に攻め)に対応できる……とか、昇格したとき喜んでたなあ……。
「え、なに? 美痴女? ビッチ女? どっちを言ったのあなた?」
「ひえーっ! マジで思想の自由くらいくださいよ! 必要ないときに読心術使うのやめてください!」
「いえいえ、今こそ使うべき時なのですよ。ほら、私のプライドが傷ついた」
「聞かなきゃそんなことにはなりませんってばーっ」
まあ、ミカ様がはあらゆる意味で恐ろしく鬼なので私も下手に出る他はない。
パワハラも大好きなんだよこの人。
「とにかく、タマタマとたまたま言うのはダメなんですよ。めっ、リコルちゃん」
「むー……」
すっごく反論したかったが無理だった。
私の額をつついた彼女の人差し指はある意味殲滅兵器だったりするのだ。
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