きゅーじつ

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☆ 大学に受かり、東京に来て早二ヶ月。田舎育ちの俺からすれば、毎日はまるでエレクトリカルパレードみたいだ。 明かりの消えない夜の街。 張り巡らされた交通網。 ゲーセン。 ショピングモール。 ネットカフェ。 アニメイト。 メイドき── いやいやいや、後半のはさておいて、とにかく、あらゆるものが整っていて、誘惑に満ち足りた、夢の世界だった。 よくある話、こういう浮かれ方をしている人間は、人生間違った方向に転びかねないのだが、今のところ大丈夫。 彼女できたし。 つまり、リア充なのだ。 実家の環境を思い出せば、あり得なさを実感する。 江戸時代か、と思うくらいだ。 小学校までは一山越えなければ着かないし、未だに汲み上げポンプが家のとなりにあるし、エアコンないし、早朝サイレン鳴るし、すきま風すごいし、熊出るし、田んぼしかないし、バス一日三便だし、薪で火焚いたりするし、地デジの意味知らないし。 前とかテレビ企画で知らない芸人泊まりに来たもんね。 どんだけうちの野菜持って帰るんだよ。 と、まあ、完全農家住まいだったわけで、両親も跡継ぎとか真剣に考えてたみたいだけど、結局、上京。 仕送りの野菜率に驚きながら、隅っこにささやかに慎ましやかに入っている煎餅を見ると少しほっとしてしまう。 別に、実家の生活が嫌いだったわけではない。あまりに今の生活とはかけ離れすぎていて、不思議な気分になっているだけだ。 ちなみに、こんな野生児の彼女の名前は眸ちゃん。 まさか、瞳ではなく眸という漢字を使うなんてと驚きもしたが、今となっては慣れた。 彼女は俺と違ってお嬢様なんだけど、冒険好き。そして、俺と同じで世間知らず。 そこで意気投合、そのまま付き合うと言った感じに。 うーん、でも、あの子、よく変なお願いしてくるんだよなぁ。 エプロンうまく絞められないから、きつく縛って、とか。 虫がついたからぶって、とか。 聞かなかったらすぐ拗ねるし、手を抜いたら怒るんで、いつもちゃんと合わしてやっている。 お願いしてくるのは、結構可愛いんだけどな。 やっぱり、女の子を傷つけるのには抵抗があったりするんだよな。 この前は、『卵を私で割って!』と迫ってきたしな。あれは怖かった。 体張りすぎだろ。お笑い芸人かってーの。 しかも、やられたあと喜ぶし。 不思議な娘だ。
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