ー時の始まりー

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地面から天井に伸びた大きな本棚。 壁一面、埋めつくされた本棚の中には膨大な量の本が隙間なく並んでいる。 一体、どれくらいの広さがあるのだろうか…。 この国にある本が全て揃っているこの部屋。 天井はガラス張りになっており、空から光が降り注ぐ。 部屋の真ん中には、広々とした机と椅子があり、スーツ姿の男が一人。 整った輪郭に、スッとした眉、二重の大きな切れ長の目、ラベンダーの様な品のあるクリアなパープルの右の瞳と、大海原を感じさせるブルーの左の瞳は、感情によって色が変化する。 またオレンジ色のストレートな前髪に天然パーマの後ろ髪。 細いわりにしまった身体つきの、その男は時間ばかりを気にしている。 「チッ…カオル、遅ぇよ…。」 呟いたその時、軽くドアがノックされる音がした。 「ゴッちゃーん。俺―。」 ドアの向こう側から別の男の声がする。 「おー、カオルか。」 オレンジ色の髪の男はそう答えて書斎を出て行った。 。
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