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雨が降る、6月半ばの空模様。
ジメジメとした感じが肌に纏わり付きはなれない。
街は昼間だが、雨のせいで人影は少ない。
そんな空の下を走る影が3つ。一人は何かを抱え、二人はそれを追っている。
「もう追っ手が来たか…」
雨で滑りやすくなった地面を転ばないように走り抜ける。
もう何度も転びそうになった。
視界の端には追っ手の姿が見える。
ここで捕まる訳にはいかない。
街からあまり離れていない所にある、とある孤児院。
俺はその前に立っていた。一つの希望を持って。
「…ここでいいか。」
一人そう呟き、孤児院の庭の茂みに抱えていたモノを置く。
「スマナイ。エント。」
最後にそう呟き庭をでる。
孤児院の前の道に出たが、追っ手の姿は見えない。
巻けたか?
その時、遠くで銃声が聞こえた。
そう思った時、近くに在った木の幹ががいきなり激しく弾けた。
破片が目に当たった。
「ぐあっ…」
どうやら弾丸が木に当たったらしい。
唸り声をあげて地面に突っ伏す。
右目を開けると、地面に血が落ちていくのが分かる。
「くっ…」
走らねば。
あの子の為にも。
気を奮い立たせ、まだ遥かに広がるダンジョン・ルートを見る。
俺は走り出した。
雨の中、
希望に託した未来を願って。
次の日---。
「院長先生ぃ!早く早くっ!こっちだよ!」
「あらまぁ、どうしたの。そんなに慌てて。」
「だから早く来てよ!ほら、これ!」
「……!!」
そこには、一人の男の子が倒れていた。
『夜昼 燕斗』の文字が刻まれた、ペンダントを持って。
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