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ケイはフと今まで自分が逃げてきた道に点々とする血を見ながら静かに思う
(こんなに出血してたのか……結局、出血多量で助からねーか)
死を覚悟した瞬間だった。ケイは逃げていた足を止め半回転してソイツの方を向く。手には先程まで使っていたテニスラケットが握られている
「とことんまでヤッてやるよ。今時の若者嘗めんじゃねーぞ」
ケイは走りだす。力の限り速く力強く
ソイツに向かってラケットを振り下ろす。しかし、ラケットは宙を舞いケイの腹をソイツの鋭い爪が貫いていた。口と腹からはありえない程の血が流れる
全然来ないケイを心配して戻ってきた真也が廊下の隅で言葉を失う。丁度良くケイが死ぬ瞬間を目撃したのだ
今にも死にそうなケイを見ながら男は呟く
「…ハズレか」
ソイツは爪に刺さったケイを地面に叩きつける
ケイは死ぬんだと思った。息は荒く夥しい出血、死ぬ為の状況は揃っている。そして、心の臓は鼓動を止めた
その光景を見て男が去ろうとした時、奇跡とも言える事が起こる。心の臓が止まった筈のケイが立ち上がったのだ。それを見た男は再び呟く。「……当たりか」と
不意にケイの口が動く
「丁度良く血も出てるじゃねーか」
ケイは急にしゃがみ点々としている血を指に付け始めた。次第にケイの指は赤く染まる。次の瞬間、指に付いた血は一ヶ所に収束し刀の型を成す。それを確認するとソイツの方に走りだし、気付けば刀の切っ先がソイツの首にめりこんでいた。刀を振りぬくと首は飛び噴水の様に血が吹き出す。首は宙を3回転し地に落ちる
「其処にももう1体居たか」
そう言うとケイは真也の方を向きだす。すると、刀を模っていた血は宙を浮き始める
「爆ぜる 爆ぜる」
血は破裂して真也に向かって動く。気付けば真也の周りの壁は血により穴だらけになった
「どっどうしたんだよケイ」
突如、ケイは頭を抱えながら苦しみ始める
「おっおい、本当にどうしたんだよケイ」
「その名で俺を呼ぶなー」
尚もケイは苦しみ続ける。それから、どれくらい経ったかケイは突如倒れだす
男は「仕方ない今回は連れて帰るか」と言いながらケイを肩に担ぎだす
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