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混ざれば一緒だ、と勢いで正体不明の粘性物質をぶち込んだ少女は、ふいにパチンと指を鳴らした。
「そーだ、あれも入れてみよっかな!」
さも名案を思いついたというような足取りで、少女は一旦鍋から離れた。
「じゃーん、私オリジナル、『魔女の秘薬』!
中間試験の時、先生に『これは個性的ですね』って言われて受かった奴!」
そーいえばあの時の先生の顔、真っ白通り越してちょっと灰色っぽくなってたけど、なんでだろ?
はて、と首を傾げる少女が持つレシピにそんな物は書かれていない。
逆に不安感を煽る無色透明の液体が、小瓶の中でちゃぷりと揺れる。
ただでさえ混沌とした鍋の真上で、少女は寸分のためらいなく蓋を開けた小瓶を反転させた。
闇が鈍い地響きを立てた。
けほけほとせき込みながら少女は手探りで明かりをつける。
天井の豆電球が光り、魔道具や薬瓶などが所狭しと並べられた部屋を照らし出した。
「……よっしゃ、できたぁ!」
すすだらけになりながら叫んでガッツポーズを取る少女の前には、
ひっくり返った大鍋、飛び散った粘着性の液体。
そして、その液体にまみれた一つのグローブだった。
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