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英雄×1 エルフのエルフ
「ぅおりゃあ!」
気合いの入ったかけ声と共に、蹴りを繰り出す。
狙いは正確、あたしの放ったスーパーキックは的のど真ん中に命中した。
だがしかし、問題は命中率より威力な訳で。
めしり、と音を立てたのはあたしの足の方だった。
「――――!
いっだぁぁあ!」
大音量の叫び声で森の小鳥達が一斉に飛び立つ。
普段見慣れてる光景でも、今はものすごく腹が立った。
「あーくそ、あーくそ!
なんで壊れないのよ!」
苛立ち紛れにそこらにあった石を思い切り投げてやるが、的はコンと音を立てただけでびくともしない。
叫びまくって疲れた喉とじんじん痛む脚を休めるために、そこらに少々乱暴に座った。
せいたかのっぽの木は空を取り囲み、鳥よ虫よおいでと花たちは甘い香りで色とりどりの体を更に飾り立てる。
緑に囲まれた景色が、反響した私の声と風の音を混ぜて、歌を奏でていた。
あたしが住んでいるウスタファの森は、今日も変わりなく悠然とそびえている。
「フゥチェ、やっぱりここにいたか」
背後の茂みがかさりと音をたてたので振り向いてみれば、集落で見慣れた顔がそこにあった。
「キィ兄!」
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