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「なんというか、……お前はいい加減そのまちがった訓練法を止めろ」
仲間内では珍しい薄紫の短髪に、透き通るような白い肌。
長身で細身なのも手伝って、キィ兄の外見は「儚い」という言葉が一番似合う。
そんなキィ兄の呆れ顔に、あたしはぐっと詰まった。
口をへの字に曲げてそっぽを向いた拍子にとんがった耳がピコリと空を仰ぐ。
あたし達はエルフだ。
魔法がうまくて、体力がないので有名なエルフ。
もちろん遺伝に従って、あたしも魔法がうまい。
そしてかよわい。
さっき使っていた的だって、本来は魔法練習用の物で、殴ったり蹴ったりするものではない。
でも。だけど。
「ヒーローがかよわかったら元も子もないじゃない!」
「またその話か」
どこの世界でもいつの時代でも、悪をくじいて弱きを助けるヒーローというものは存在する。
あたしはそんなかっこいい姿に憧れた内の一人だ。
ヒーローはなんでもできて、特に肉弾戦に強い!
それがあたしの持論である。
ヒーローはかよわかったらダメなのだ!
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