バニラアイス

15/24
720人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
こんな自分達のちょっとした進歩。 …聞いて驚くな! 何て言える程のことじゃない。 それでも自分の中ではカッとなる大きな進歩。 一条さんと初めて手を繋いで歩いた。 歩いている最中にたまに当たる手と手。 最初は気にしてなかったけど、それも数を重ねると気になって仕方がない。 そんな時に目にうつるのは恋人達。 意識し始めるとどうしてこうも緊張するんだろう。 気にもならないようなことだったのに。 冷静を装うものの、どうしても手元に視線が泳いでしまい思わず力が入る。 どうしたらいいのか分からなかった。 …普通、付き合っているのなら繋ぐのが普通? その疑問がぐるぐると頭の中を回るうち、再び手の甲が触れた。 …どうしよ。 結果、俺は無神経ながら何も言わずに彼女の手に触れてしまった。 ゆっくりと自然に触れたつもりだった。 なのに、一条さんは思いっきりビクッと肩を震わすと俺の方を見る。 「あ…ごめん」 そんな態度をされちゃ元も子もない。 自分こそ思い切り距離を取ってしまった。 …何してるんだろう。 人通りの多い道。 とにかくこのままで立ち止まってはいられそうもない。 気まずい。 それでも再び歩き出そうと足を進める。 スカスカの掌。 でも、二つ目の信号を待っている時、ふと温かな物が手に触れた。 何も言わずに頬を赤くしている。 一条さんは俺の方を見ることなく、手だけを静かに絡めていた。 それは柔らかな俺より小さな手。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!