バニラアイス

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ひまわり畑の帰り道。 まだ日は高い。 前を歩く一条さんを俺はじっと眺めた。 ポケットから携帯電話を取り出すと、気付かれぬようにシャッターを押す。 爽やかな絵が一枚、思い出として形となった。 彼女は、このことを知らない。 俺は一人微笑ましく思うとその写真を保存した。 それからはと言うと、何とD駅へと戻るとその周辺をブラブラしていた。 結局、それ以上どちらがこれと言った案を出すことがなかったからだ。 俺は久々にこの駅周辺に来て、少し変わったこの場を物珍しく思う。 でも、彼女にとっては見慣れた風景ではないのか。 …帰ってきたの間違いだったかな。 とは思うものの時既に遅し。 地下街を何気なしに歩き、気になる所に入る。 それの繰り返し。 でも、一条さんは何処に居ても笑顔。 「ねぇ、楽しい?」 一条さんのニッコリが頂点に達していた若者で群がっている洋服売り場。 似合わないガヤガヤとした場所。 そこで、ついに歩く彼女の腕を掴んで思わず聞いてしまった。 「どうしたの、突然」 もちろんビックリした丸い目で俺を見上げている。 それでも尚、気にせずに続ける。 「俺といて楽しい?」 たくさんの人が自分達だけをよけて通る。 中には視線を向ける人もいた。 「…楽しいよ?」 「ホントに?何か無理して笑ってない?」 「笑ってないよ」 一条さんは怪訝そうな表情をすると首を傾げた。 「冷泉君?」 「…いや、ちょっと不安に思って」
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