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「ちょっと休憩しようよ」
次にそう提案したのは彼女。
日のさんさんと照る外へ出ると、デパートの外にあるベンチに腰掛けた。
何だろう。
すごく落ち着くのは。
たまに吹く風が気持ちよい。
「楽しいよ。私、冷泉君と一緒に居れるだけで嬉しい」
しばらくして、彼女はそう言い終わると頬を赤くした。
「…本当だよ」
俺が聞いてくると思ったのか、最初からそう言って。
「冷泉君こそつまらなかったよね。ずっとブラブラしてただけでごめ…」
「そんなことはない」
彼女が言い終わる前に俺は即答した。
そんなことない。
自分の方こそ、場所なんて全く関係なかった。
ただ、相手のことを思うからこそちゃんとした場所を考えるのに必死で、いつもの自分達を見失っていたような気がする。
ひまわり畑の選択に成功していただけに。
「俺も場所なんて関係無いよ」
普通に言ったつもりなのに、何故か頬が火照るのが自分でも分かった。
「えっと…冷泉君が昨日付き合ってほしかった場所って…今から行けないの?」
「あぁ、うん。それはもう無理」
あの日じゃなければ意味がなかった。
チャンスはまたいくらでもあるのに、何だか今こうして思うと悔しいな。
場所はこのデパートからもそう遠くないのに。
「…そうなんだ。ごめん。それってどこだったの?」
「D町の市民会館のホール」
「ホール…?」
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