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椿の部屋の椿のアタシはいつも本を読んでいる。
木陰で本を読む金髪で青い瞳の椿のアタシは、本当にアリスが絵本から出てきたような錯覚さえ覚える。
遠くで元気に走り回るアリス達を見ながら、静かに、寂しげに微笑んでいる。
椿のアタシは生まれつき体が弱かった。
「ねぇ椿のアタシ、いつも何を読んでいるの?」
暇だったアタシはある日、なんとなしに訊いてみた。
いつ見てもページが進んでいない気がするの、と要らぬ言い訳を入れながら。
「桜の私、これは妖精の本よ」
ペラペラとページをめくり、綺麗なイラストを見せてくれた。
妖精ってティンカーベル位しか思い浮かばない。
「これはシルキー、こっちはコロポックル」
色々な妖精の話を聞かせてくれる椿のアタシは、とても楽しそうに見えた。
「でも…いつかは見えなくなるのよね…」
寂しそうに空を見上げ、ぱたんと本を閉じた。
次の日から、椿のアタシは居なくなった。
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