第二章 覚醒の予感

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(ゆっくり寝かせてやるか…)  皐月が視線をディスプレィに移した瞬間、それは起きた  後部に備え付けられたDIVEシステムが突然、起動を始めたのだ 「えっ?何が起きたの…?」  慌ててDIVEシステムに視線を移すと内部モニターに存在しないはずの奈月の記録情報が表示され、さらには五感のリアクトが始まっていた  有り得ないことが起きている状況に皐月は嫌な予感に襲われた (奈月は助手席で眠りについている…ということは意識のみがDIVEシステムに同調している可能性があるって事だわ)  それはかなり危険なことだった  過去にDIVEシステムにより意識と肉体の分離による事故は稀だが何件かはあった  そして、その事故では誰も助かっていない……皐月を除いては  本部のメインパーソナルに不法侵入した際に皐月は肉体と意識の別離を否応なしに経験した  原因は本部による不正アクセスルートの強制切断だったが[kasumi]と意識を共有することで何とか生還することが出来た  だが、今回は意味合いが違う  原因が全く分からないのだ  皐月はDIVEシステムのある後部座席に急いで移動し、ディスプレィにシステムの稼働状況を呼び出す  映し出されたディスプレィには奈月の意識内の様子が彼女の目線で映し出された 「これって……まさか!?」 その映像には見覚えがあった  皐月がメインパーソナルに侵入した際に触れた機密情報ファイルに収められていた映像の一部だった  それに触れるという事が何を意味するのか、皐月は誰よりも明確に知っていた (TER‐S本部によるアクセスルートの強制切断の執行……)  それで皐月自身も生死の境を彷徨うことになったのだ
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