第二章 覚醒の予感

1/32
前へ
/34ページ
次へ

 第二章 覚醒の予感

西暦2065年  超々過密都市TOKYO、この国家は他の先進国が復興した従来型の政府都市らと比べ、かなり異質な復興が行われた企業都市だった  TOKYOは政府や国家と呼ばれるモノは存在せず、企業による独裁的な監視下に置かれていた  その企業は[襲来]直後の東京を企業都市TOKYOの基板となる建設にいち早く着手し、僅か数年でTOKYOを造り上げた  さらに治安維持の名目で、独自の警察機構に似た組織を設立した  その時点で実質上の国家的役割すら、その巨大企業が一手に握ることとなった  [襲来]の爆心地ともなった旧東京都心部は超A級立入禁止区域に指定し、警察機構から独立した組織、TER‐Sの監視下に置き厳重に管理するようになった  それは、まるで何か知られてはいけないモノを隠すかのように厳重な監視体制が敷かれていた  TOKYO新都心に近い場所にも禁止区域は存在しており、周囲の街明かりを飲み込むかのような暗闇が、まるで穴のように存在している姿に人々は『DarkNight(闇夜)』と呼んでいた  『DarkNight』には[襲来]の傷跡が今尚、生々しく残されており削り取られたかのような巨大なクレーターが赤茶けた大地を露にしていた  そんな『DarkNight』にTER‐Sの制服を着た髪の長い女性が感傷的な瞳で見つめながら立っていた 「人類の大半を死へと誘った[襲来]の傷跡…いつ見ても酷いわ」  生暖かい風に靡く髪を押さえながら裕美野奈月(ユミノナツキ)がつぶやく ―ちょっと奈月ぃ、そんなの見てないで仕事、仕事!…ってか、聞こえてる?  長い髪で隠すように装着していたヘッドセットから同僚の葛城皐月(カツラギサツキ)の声が聞こえる 「…分かってる、いま行く」  ため息混じりに無線を切ると奈月は傍に待機している黒塗りの大型のワンボックスカーに乗り込んだ  外見とは違い、室内は多くの器材が天井まで覆い尽くし、後部座席の中心には丸みを帯びたデザインの簡易型DIVEシステムのシートが一台、備え付けられていた  運転席から皐月がヒョイッと顔を覗かせる  少し怒っているようにも見える切れ長の瞳で奈月を見つめると無愛想にDIVEシステムを指差した 「あとよろしく…」  それだけ言うと座席の背もたれを下げ、帽子を自分の顔に被せた (なんだか機嫌が悪そう…)  横目で皐月を盗み見ながらDIVEシステムに潜り込みハッチを閉めると静かに瞳を閉じた
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加