第二章 覚醒の予感

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 ここはどこだろうか…  窓から見える外の景色をぼんやりと眺めながら、ふとそんなことを考えていた  先程まで見ていた活気のある街並みと雰囲気は似てはいるが何がが違う気がしてならない  それが一体なんなのかまでは分からなかったが、一つだけ気が付いたことがあった  静かすぎるのだ 「…なんだろ、変な違和感がする…ねぇ、皐月…えっ?」  運転席に座る皐月に声をかけようと振り返った瞬間、奈月は大勢の人々が行き交う大通りのど真ん中に立ち尽くしていた 「どういうこと…?」  急激な変化に対応できずに茫然と周囲を見渡してみる  その景色は先程まで見ていたモノとは全く違う街並みへと変化していた  少し時代を遡ったような古めかしい構造のビル群が立ち並び、大勢の人々が彼女の存在に気付くことなくすぐ傍を通り過ぎていく  けれど、不思議なことに彼らからは人の息吹といったモノが全く感じられなかった 「あのぅ……」  自分の傍を横切ろうとする女性に声をかけようと手を伸ばした瞬間、それは起こった  目の前の街並みが一瞬の内に眩い光に包まれ、崩壊を始めたのだ  周囲の道路や建物のアスファルトやコンクリート等が砕け散り、それらが宙を舞い、空高く立ち上った閃光が付近の窓ガラスを粉々に砕いていく  そして、それらは逃げ戸惑う人々の頭上に容赦なく降り掛かる  先程まで静まり返っていたのが嘘のように右往左往する人々が奈月の傍を駆け抜けていく 「何なの?一体」  何が起きたのか理解できず、ただ呆然と崩壊していく街並みを見つめる事しか出来なかった  所々から火の手が上がり始め、辺り一帯を紅連の炎が包み込んでいく中で奈月は奇妙な光景を目の当たりにした
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