第二章 覚醒の予感

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 熱風が頬を焼いていく感触を肌で感じる中で彼女の視線が一点に向けられた  その視線の先には炎に包まれた路地裏から幼さの残る一人の少女がゆっくりとした足取りで現われたのだ  燃え盛る炎から火傷一つ負わずに現われたことよりも少女の容姿に奈月は瞳を奪われた  全身を薄汚れた包帯で覆われ、その手には半分ほど焼け焦げた人形を握り締めている  包帯の微かな隙間から垣間見えるその瞳が冷たく奈月を見つめる 「…貴方は誰なの?」  奈月の問い掛けに少女は不敵な笑みを浮かべ呟いた 「あたしの事が分からないの?……ふふふっ、おねぇちゃんなら、いつかあたしに会えるよ……だって……」  少女が喋り終わらない内に奈月の視界が急激に暗転し少女の姿が離れていく (あの娘の声…どこかで聞いた事があるような気がする)  どこでだったか思い出すことが出来ないけれど何故だか、とても身近な存在のような気がしてならなかった ―…っき!……奈月ぃ~?  意識が遠退いていく中で、奈月の意識の奥の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる (皐月が呼んでる…)  不安そうな声に導かれるかのように奈月は意識を声がする方へと漂わせていった
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