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「つ、次は私だな!」
このちょっとアレな空気を変えるべく立ち上がったのは葛葉綾。
いつもの胴着姿、ではさすがになく、私服だ。
わざわざ持ってきたのか、バッグからリンゴを幾つか取り出した。
綾のことだし、握り潰したり蹴って粉々にしたりだろうか。
床を掃除する準備をしなきゃな。
「よし……!」
集中してリンゴを一つ手に持つ。
やはり握り潰すのだろうか。
「ハッ!!」
―――と、思われたが、意外にも綾は手にもったリンゴの上にさらにリンゴを乗せはじめた。
にしてもどんな仕組みなんだ?
グラグラと危なっかしく揺れつつも、リンゴは崩れることなく一つ、また一つと積み上がっていく。
そして、八つ積み上がったところで綾は立ち上がり額を拭った。
「……すげ」
一同唖然。
反応に満足したのか、綾は笑顔でリンゴをダルマ落としのように弾き、俺たちにリンゴを行き渡らせた。
なんという神業。
「こほん。じゃあ次は私ねっ。こんなものしか持って来れなかったけど……」
盛り上がった空気を引き継ぐのは青葉奏。
俺は幼なじみだから、取り出したピアニカがなにを指すか完全に理解していた。
奏は小学校の時、ピアノ教室に通っていたのだ。
「じゃあ……いきます」
静まる空気。
息を吸う音が鼓膜を揺らし―――
ぷぁ~
一同がずっこける音。
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