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俺だけが生温かい目で必死に演奏する奏を見守っていた。
うん……奏がピアノをやめた理由が『あまりにも上達しないから』だったな、たしか。
弾き終えた奏の顔はやりきった達成感で一杯だった。
「どうだった? 一応『お正月』のつもりだったんだけど……」
「うん、よかったぞ奏」
「ほっ、ホント!?」
嬉しそうにピアニカを抱きしめる奏。
その笑顔が見れただけでも嘘をついた価値はあったな……。真実は時に残酷なものだと言うしね……。
その後も、薫の傘を使った曲芸(本人は否定してるが)や才貴の女装、真希のプロレスショーwith変態レスラー昌也だとかで盛り上がりは最高潮。
「次は私だな」
ややぁと出張るは生徒会長十六夜由香菜。
さて……どんなスゴワザが飛び出すのか―――
「僭越ながら、私は百人一首が得意でな。腕を見せるのも兼ねてみんなでやろうじゃないか」
「…………」
……地味……だな……。
すごく地味な絵面だがいいのか?
こんなので。
「って先輩、それどうしたんすか?」
指差す先には低視力を補うアレ。
「ん? コレか? 最近視力が落ちてきたんでな」
メガネを上げてみせる会長。
うっ……なんかドキってした。やはり昌也なんかとは格がちがう。
「むぅ……」
頬を膨らます奏。な、なんだなんだ!? わき腹に激痛がっ!
「では始めよう。読み手は僕がやるからみんなは由香菜に負けないようにな」
才貴が札を胸の辺りで持つ。
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