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刹那、うねりの様な野太い轟音が大気を揺らす。
それに続き、山を呑み込むばかりの勢いで突風が駆け巡る。
「うわっ!」
全く予想していなかった突風に慌てふためき、背中から地面に落ちる。
誰かに突き飛ばされたと錯覚させられるほど強力な突風に、軽い放心状態に陥る。
親父がいたら間違いなく笑うであろう馬鹿みたいな姿で暫く空を見上げ、深く息を吐く。
陽が完全に落ちてしまったからであろう。綺麗な満月に白い息がかかる。
今度は小さく息を吐き、気持ちを落ち着かせ、若干背中に痛みの余韻はあるが、地面に手をつき起きあがる。
ロウソクの火も消え、山一帯が不気味な静けさを醸し出している。
なんなんだ、いったい…。
まるで何かが起こる前兆の様な気がしてならない。
緊張感が体を支配する。
冷や汗が頬を伝い、地面に落ちていく。
何かしなければ…。脳をフル回転させて、行き着いた答えは現状の確認。
普通に考えたらそれが当たり前なんだけど、今回ばかりはどうも冷静さを欠いていたらしい。
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