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身の回りの安全を確認し多少気持ちが楽になる。
最後の確認だ。
気を取り直し母さんの墓にゆっくりと、土の感触を確かめるように一歩ずつ近づく。
予想していた通り、ライトを当てると見るも無惨に荒れている墓が其処にはあった。
お供え物が殆ど吹き飛ばされているみたいだけど異常は無さそうだ。
つうか結局何もないのか。正直拍子抜けだなぁ。
緊張の糸が切れた瞬間、その場に力が抜けたように座り込む。
人差し指で後頭部を数回掻き、冷静になったいま、観察するように墓を観る。
つい先程まで親父の手によって磨かれた墓石は、自発的に光るのではないかと思うほどの耀きを放っていたのだが…。
今となっては磨く前と、さほど変わらない状況になっている。
小さな葉っぱたちが頭に被るように木の枝から落ち、砂埃が掛かり綺麗な漆黒の石がくすんで見える。
果物は彼方此方に散らばり、花束も散り散りになってしまった。
何故かロウソクとお菓子の袋、線香は無事みたいだ。
不意打ちにしても人間のオレが倒される強さだったわけだし、覚悟はしてたんだけど。
意外にも被害は小さく、そんなに時間はかからなそうだ。
それでも花束なくなったのはやばいな。絶対母さん怒ってるよ。
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