突然

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  母さんはある花が特別大事らしいからな。 何ていったかな…。 あ、あ、あい………。 駄目だ。思い出せねぇや。 いくら考えても出てこない思考に諦めがつき、頭を切り替える。 墓石の直ぐ傍にライトを当て、辺りに散らばっている花や果物を視界に入れる。 こりゃ早く片さないと親父に怒られるかもな。 下手すりゃ拳骨喰らうかも知れないし。 身体に自然と埋め込まれた痛みを思い出す。 本能ってやつだな。 若干の身の危険を感じた瞬間、ほぼ無意識のうちに花を拾い始めていた…。 何処にいてもオレを苦しませるのか、あの親父め。 親父の恐さと自分の不甲斐なさを憎みながら花を拾い続ける。 それにしても酷いな。 作業をしている最中に手に握っている花を見て想う。 一瞬見入るほどに彩られいた花束は一本一本バラバラになってしまい、 綺麗だった花びらも散り散りになり、元が何だか分からない状況になっている。 多少の罪悪感に苛まれるが、最後の花を拾い、花束(茎束?)を袋の中に入れる。  
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