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袋を地面に置き、再び腰を下ろす。
土が混じった淡い赤で彩られた林檎を袖口で拭き、汚れをとってから元の場所に戻す。
周りに目を向け、同じように散乱した林檎を全て拾い集める。
親父が帰ってきたら水で洗った方がいいかもな…。そういえばまた一から掃除しなきゃ駄目じゃん。
肩を落とし今までの労力が無駄だったことに嘆息を漏らす。
気落ちしながらも最後の林檎を置き、手のひらで額を覆う。
不思議と額に冷たい感触が残る。
少しの驚きを察し、直ぐに手を額から外し、光を当てる。
てのひらには光に反射し、白く濁った水滴がぽつぽつと地面にしたたっている。
なんだこれ?
水もないし、汗って訳でもない。もし汗だったらオレは重度の多汗症か、正体不明の謎の病気だな。
生憎そんな病気と無縁の健康体を維持してるオレには身に覚えのないこと。
じゃあこれはなんだ?
手を眺めていると、ゆったりとした微風が吹く。
その風に乗ってきたのか、どこか甘酸っぱい匂いが鼻を刺激する。
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