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…甘酸っぱい?
ふと感じた違和感を確認するべく動く。
可能性は一つだけ。
オレは頭の引っ掛かりを解くべくそれを掴み、明かりを照らす。
照らされたそれは異様な形だ。本来なら綺麗な丸い曲線に窪みがある。なのにこれは、文字通り潰されている。
多少へこんでいるのではなく、地面に叩きつけられたように形が変わっていた。
なんなんだよ、これ…。親父がキレて握り潰した時ぐらいしか見たことないぞ。
またもや怪奇現象に遭遇し、異様な林檎をただ眺めることしか出来ない。
ややあって、とりあえず林檎は保留ということで墓石に戻し、踵を返したオレの前に、ぶっとい大木に似た何かが立ちはだかっていた。
ライトで照らすと大木は黒い毛に覆われ、目の前に二本、奥に二本それは聳えていた。
ゆっくりと首とライトを空に上げていく。
全身を包む漆黒の黒毛、鋭い牙が並ぶ口、ギラギラと不気味に輝く黒い瞳。狂暴な顔が首から三体生えている。
いうならば空想上の世界に生きるケルベロスのようだ。
五mはある巨躯は全てを凌駕するオーラを身に纏い天高く吠えた。
空を揺らすその雄叫びは何処までも届くかのように轟く。
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