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鼓膜を破らんとする勢いにただ両手で耳を塞いで雄叫びが終わるのを待つことしかできない。
こいつがなんなのかはこの際どうだっていい。オレの身が危ないってことだけはよくわかる。
とりあえず逃げなきゃマズイ。
だけど足を動かそうとするオレの意思とは全く逆で身体は思い通りに動いてくれない。
怪物は咆哮が終わり、六つの瞳で真っ直ぐと『獲物』を捉えている。
ダメだ、完全に膝が笑ってやがる。
蛇に睨まれた蛙とはこういうことか。今やっと蛙の気持ちがわかったぜ。
いくら動かそうと、ましてや足を叩いたところで足は動く気配すらしねぇ。
そんなオレに追い討ちをかけるように化け物は大木のような右前足を振りかぶりやがった。
おいおいおい、冗談じゃねぇぞ。なんで意味のわかんねぇこんなのに殺されなきゃいけねぇんだよ!
マジで動け! オレの足!
大きな大木が降り下ろされた瞬間、オレの金縛りは解けた。
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