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…し、死ぬかと思った。本気で死ぬかと思った。
間一髪で力の限り横に飛び、なんとか母さんとの再会は免れた。
でも、まだ安心はできない。化け物は上唇を吊り上げ、鋭い牙を見せながら、低い呻き声をあげてオレを睨み付ける。
そんな臨戦態勢に入られても困るんだけど。とりあえず足が動けるようになったんだ。
やることは決まってる。化け物に背中を向け、首を捻り―
「あばよ!」
皮肉を込めた捨て台詞を吐き、陸上選手顔負けのスタートダッシュを切る。
化け物は地鳴りのような雄叫びをあげ、遅れてオレの後ろを追ってくる。
やばい、やばい、完全にキレさせちまった。変な意地張んなきゃよかった。
当の本人は本気で後悔中。
まぁそんなことはどうだっていい。とりあえず逃げなきゃ。
目の前の木々をくねくねと蛇行しながらなるべく狭い所を疾走する。
あんだけ図体はでけぇんだ。密集してる狭い所はさぞ進みづらいだろ。
少しの余裕をみせ、後ろを振り向く。
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