突然

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  「おい、さっさと行くぞ」 脳内会議が終わったと同時に、トランクから荷物を出した親父が山の中に向かって歩きだしていた。 小走りで親父の隣まで行き、機嫌をとるために荷物はオレが預かる。 荷物はそれほど重くはなく、花や線香などお参りの物だけだからそんなに苦ではなかった。 荷物を両肩に担ぎながら、舗装など全くされていない険しい山道をしばらく歩いていると、少し小さな広場に着いた。 広場の奥の方に、お世辞にも立派とは言えない小さな墓石が、一つぽつんと建っている。 石の下に居るであろう人物の存在を確かめながら、小さな墓石に向かってゆっくりと歩いていく。 両肩に担いである荷物を地面に下ろし、一年ぶりの再会をしたオレは頬を緩ませ“彼女”に挨拶をする。 「久しぶり…」 立派では無い墓石でも、彼女の名前はしっかりと深く刻まれている…。 「母さん…」 【霧崎 咲】(きりさき さき) 世界でただ一人のオレの母親だ。  
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