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音のない しんしんとした世界。 困ったわ‥と愚痴る私の声だけが響く。 こんなに響くなら、仲間のトコまで聞こえるかしら? 私はどうでも、この素晴らしいご馳走が、みんなに届けられるわ? 『誰か‥ お願い!誰か気付いて!? 私は此処よ! 誰か!』 私は必死で叫んだの!  『誰か!  誰か!』 あまりにも必死に成りすぎて、周りなんて目に入って無かったの! 「可哀想に… よしよし 大人しくして? 今、助けてやるからな」 突然声が聞こえて もがくようにして必死で叫んでいた私を、後ろから包んだ何か。 頭を撫でて宥めてくれて 藁(ワラ)の匂いと かさかさと音がして‥ その優しい温もりを確かめて 私は固まった! そこには雪除けの蓑(ミノ)を着けた青年が居たの 『い、嫌っ! 放してっ!? 怖い!殺される!? あっちに行ってよ!!!?』 「こら 暴れるなって! 余計に怪我が酷くなるぞ!? 大丈夫、大丈夫だから!」 私を抱き込むカタチで押さえ付けて、罠をカチカチと外す彼。 頭に被せていた布を、私の怪我した足に巻いてくれたの。 「よしよし耐えたな。いい子だ。 足は折れては無いが気を付けるんだよ? もう行きなさい。   ね。鶴?」 そうなの。 怖いと思ってた人間に、思わず優しくして貰って 呆然としている私は――― 鶴の娘だったの。
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