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「もうすぐ今年も終わりだね」
『そうですね……。早かったです』
ありきたりな会話を交わす私達は、ポカポカで暖かいこたつに入り、向かい合うように座っている。
台の上にはみかんが一つ。
先輩、食べるかな? 私食べてもいいかな。
沖田先輩はどこも賑やかな番組のチャンネルを、リモコンで次々と変えていく。
テレビにあまり興味がなさそうだ。
私、紅白見たいんだけどなぁ……。
そんな先輩の横顔をぼーっと見ていたら、今年一年の沖田先輩との出来事がぽんぽん浮かんできた。
沖田先輩と出会って、お付き合いし始めて……。
それから、夏休みには一緒に海に行った。
秋は紅葉も見に行ったし、クリスマスも今いる沖田先輩の家でケーキを食べて、ゲームして、楽しく過ごせた。
「……何見てるの」
『えっ!? あっ……ごめんなさい……』
一人沖田先輩との思い出を回想していた自分が恥ずかしい。
しかも、先輩の顔見つめてたまんまだったし。
意識が完全にどこか行ってた。
真っ赤な顔であたふたする私を見て、先輩はくすっと笑う。
そして、なぜか先輩の長い足が私の足を蹴ってきた。
『――きゃ!? な、なんですかいきなり! ビックリしたじゃ、ないです、か!』
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