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『ユキちゃん、割り箸』
『ふんっ!』
割り箸を河口さんから差し出されたけれど、私は手を出さなかった。私は割り箸が割れなかったのだ。父が代わりに受け取り、割ってから私に差し出す。初めて食べる山菜うどん、山菜は見た目はグロテスクだ。
『どうしたの? ユキちゃん』
『……』
『お箸、使えなあい?』
『使えるもん!』
一口食べる。でも私はそこで断念した。山菜の味は子どもには苦く、結局は河口さんの注文したミートソースと交換した。フォークでぐるぐるとスパゲティを巻くけど、大きな団子状になる。
『お姉さんが巻いてあげる?』
『ふんっ!』
それをかじり付くように食べていると河口さんはクスクスと笑う。そして父と河口さんは大人の高い目線で微笑みながら会話を続ける。何の話か分からない私は父の隣でふてくされていた。
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