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矢島は小さい頃から、ものすごく人の気持ちに敏感なところがあり、
黒澤が何か戸惑いを感じてる際には直ぐに顔色を読み、
「黒澤?、何かあったの?」「体調、大丈夫?」など、さり気なく声を掛けてくる。
それは押し付けがましいことがなく、冗談めかしたり独特の方法で心地よい距離感を保ちながら、相手を気遣うことができる。
時折なんとなく顔が見たくなるのも、矢島のそんな魅力に触れたいからであるのかと思う。
自己主張の激しい人々に囲まれ、日々神経を尖らせ続けている黒澤にとっては、今いる目の前の二人は稀少人種かもしれない。
「室長、オレンジジュースで宜しいですか?」
グラスを片手ににこやかに尋ねるカゲヤマは、昨日の不安そうな表情は全く払拭され、矢島と微笑み合っている際には幸せそのものだ。
何だか、胸の奥が、痛む。
どうしてなんだか、
……黒澤自身も呆れていた。
「……室長?」
「あ、すみません、オレンジで大丈夫だよ。
カゲヤマくん、ここでは室長なんて呼ばなくていいから。」
黒澤の問いに、カゲヤマは、ハタと、困った。
「では、何とお呼びしたら……。」
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