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一方の黒澤は、バスルームで赤くなった顔のクールダウンに必死だった。
めったに感情に左右されることがないはずなのに、
今までこんなに近くにいたことのない彼女の存在に触れ、
自分でも顔色が変わった瞬間を感じ、動揺した。
目に付く前に意識的に飛び出したのだが、
矢島には勘づかれたかもしれない。
いづれにしても、昨夜から、らしくない自分を矢島に晒し続け、かえって矢島の方が冷静に黒澤のことを受け止めていることを感じる。
「ま、カゲヤマの部屋も張らなければならないのも確かだから、
ここはおれと黒澤で協力体制ってことで収めような」
同居の際、長引く議論で昨夜、矢島の方が譲歩した際、穏やかに言った言葉だ。
顔を冷水で抑えながら、いつもの自分を取り戻すため、前髪を上げた。
矢島にはどうせ、全て見透かされる。
それならいっそ、心のままに二人に接していくべきか、彼は鏡を見ながら考えていた。
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