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未華ちゃんは黒澤の可愛い年の離れた妹で、大人しくて病気がちな優しい子だった。
入院生活が長く、寂しい毎日を送っていたので、黒澤がマメに面会に通い、矢島も何度か同行したことがある。
確か矢島たちと同じくらいで、ほぼ溺愛に近く、よくあんな風に果物を剥いて食べさせてた。
その度に、
「もう、お兄ちゃま、子供じゃないんだから……。」
と、苦笑しながらも未華ちゃん、黒澤の為に食べてあげていたっけ。
そう言えば、何となく、物静かでややカゲヤマは背格好や雰囲気的にも未華ちゃんと重なるところがある。
未華ちゃんが亡くなったとき、黒澤は悲しみを極力顔に出さないよう振る舞っていたが、考えてみれば、あの溺愛ぶりで大きな傷を抱えていないはずがない。
「………。」
矢島は腕組みをした。
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