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部屋を後にした黒澤は、しまい込んだ切ない思い出を引き出してしまってもいたが、かえって清々しい心持ちに包まれ、黄昏を眺めていた。
未華が亡くなった現実を認めることができず、仕事に没頭し続けていた自分がいた。
大きなプロジェクトのリーダーに抜擢されたばかりだったことと、失ったものが大きすぎて、バランスを欠いてしまいそうだった為、意図的に悲しみを消してしまっていたのだ。
カゲヤマを見たとき、何だか懐かしい想いがしたこと、今だったら認めることが出来る。
………未華、こんなお兄ちゃんで、ごめん。
「………で、妹さんと、私、似てるの?」
「ああ、ずっと引っ掛かってたんだけど、未華ちゃん自体に黒澤があんまり会わせたがってなかったからあんまり面識はなかったから。
何せ、大事にしてたし。」
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