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矢島とカゲヤマは、夕暮れせまる港を見下ろせるレストランで、黒澤の好意に甘えていた。
彼がよく接待に利用しているレストランなのだが、押さえてくれた席は海辺のアウトサイドの小部屋で、心地いい海風を受けながらゆっくりと2人っきりで時間を過ごせた。
「あの人、全く女っ気ないのに、こういう店とか部屋とかよく知ってるんだよな……。オレ、ここ、はじめてかも……。」
矢島が感心してつぶやくと、カゲヤマは、
「………二回目、かも。」
「へえ、誰ときたの?。
」
「……室長に、なんでか接待の店の下見に同行でって……。
なんだか普段から室長って雲の上だったし、優しいけどあんまり接触のない親戚との食事会みたいな重苦しい雰囲気だったの。
まさかこんなに距離が縮むとは思ってなかったけど……。」
カゲヤマは淡々と語ったが、矢島にとっては凍りつくよな話だった。
「……確かに職権乱用もいいとこなんだけど、どうしてか黒澤に肩入れしちまうのは、何でなんだろう?」
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