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薄暗い森。
立ち並ぶ木々に視界は悪く、昨夜の雨に足元はぬかるんでいる。
静寂…。
その中で聞こえるただ一つの息遣い。
黒のローブが闇に紛れ、フードを深く被っているため顔は分からないが、背格好からまだ少年のように見える。
少年は木に寄りかかり辺りを窺う。
手には身の丈ほどもある槍、色は少年のローブとは対象に純白。まるでそれは闇に浮かぶ一筋の光のよう。
「……来る」
少年が小さく呟いた。その刹那、バキバキと木々の倒される轟音。
それと共に大きな黒いなにかが現れる。
少年は軽く身を躱し、じっとそれを睨み付ける。
月明かりに照らされたそれは少年の何倍もの大きさのドラゴンであった。
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