プロローグ

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  一組の男女がいた。 男の容姿は平凡だった。 女の容姿は美しかった。 男は悲しい顔をしていた。 女は微笑んでいた。 「…行くのか?」 男が問う。 「うん、行くよ」 女は答える。 「だって、相手は……」 「大丈夫だよ」 言葉を濁す男に、女は笑顔で答える。 「しかし……」 「ねぇ。じゃあ約束」 「約束?」 「必ずまたここに帰って来るよ」 「え?」 「アナタのもとに戻って来る。何があっても、どうなっても、絶対に戻って来るから」 「…本当か?」 「約束する。だから、アナタは待っていてくれないかな?」 「…分かった。待っている」 「ありがとう。じゃあ、行って来る」 「ああ、行ってらっしゃい」 男は見送り、女は歩み出す。 男は女が見えなくなるまで見送った。 女は後ろにいる男に振り返らずに歩み続けた。 そして、男と女は別れた。 互いに交(マジ)えた約束を信じて。 しかし……。 “女”が再び男の目の前に現れるコトは───二度となかった。 .
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