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「お父さん」
「どうした、桃?」
「どうしてボクの名前は、『桃太朗』なの?」
ある日、桃は金太に尋(タズ)ねた。
「どうしてって……そりゃあ、桃が母ちゃんの腹から桃の節句に産まれたからだろ?」
「『桃太』とかじゃ駄目だったの?」
「桃は『桃太』が良かったのか?」
「ボクの名前、長いんだもん」
桃は頬を膨らませて金太に言った。
「おいおい。だったら父ちゃんはどうなる?
父ちゃんの名前も『金太郎』で長いぞ?」
金太と呼ばれている父の名は、『金太郎(キンタロウ)』と言った。
「だって……食べ物の桃って桜色じゃないか」
「何だ、桃は桃の桜色が女みたいで嫌なのか?」
「うん…」
「父ちゃんは好きだぞ。桜色は綺麗だし。食い物の桃は美味い。最高じゃないか」
「ボク、『桃太』か『太朗』のどっちかが良かった」
名前は生命の次に貰う大切な物。
本人が気に入らないと文句を言っても、今更仕方がないのだが。
「ははっ!
そうかそうか。なら、お前の本当の名前の由来を教えてやろう」
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