第一噺:桃と呼ばれる子

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  「お父さん」 「どうした、桃?」 「どうしてボクの名前は、『桃太朗』なの?」 ある日、桃は金太に尋(タズ)ねた。 「どうしてって……そりゃあ、桃が母ちゃんの腹から桃の節句に産まれたからだろ?」 「『桃太』とかじゃ駄目だったの?」 「桃は『桃太』が良かったのか?」 「ボクの名前、長いんだもん」 桃は頬を膨らませて金太に言った。 「おいおい。だったら父ちゃんはどうなる? 父ちゃんの名前も『金太郎』で長いぞ?」 金太と呼ばれている父の名は、『金太郎(キンタロウ)』と言った。 「だって……食べ物の桃って桜色じゃないか」 「何だ、桃は桃の桜色が女みたいで嫌なのか?」 「うん…」 「父ちゃんは好きだぞ。桜色は綺麗だし。食い物の桃は美味い。最高じゃないか」 「ボク、『桃太』か『太朗』のどっちかが良かった」 名前は生命の次に貰う大切な物。 本人が気に入らないと文句を言っても、今更仕方がないのだが。 「ははっ! そうかそうか。なら、お前の本当の名前の由来を教えてやろう」 .
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