第一噺:桃と呼ばれる子

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  「ボクの本当の名前の由来?」 「おうよ! 桃。お前は───」 「金太!!」 金太が桃に、桃の名前の由来を教えようとした時、それは止められた。 「紫」 「お母さん」 話を止めたのは、金太の妻で桃の母親である紫だった。 「金太。言ったはずよ? その話、桃にはまだ早いわ」 「良いじゃねぇか、別に。今、桃に教えたって」 「駄目よ!!」 金太は、桃にいずれ教え、桃が識(シ)る時が来るのであれば、今教えても良いと考えていた。 しかし、それを紫は許さなかった。 「金太。物事には段取りってもんがあるでしょう! 七つの桃が識るには重過ぎるわ!!」 「相変わらず細けぇな。桃を誰だと思ってやがる? この“強い”“優しい”“良い男”が揃った金太郎の血をひく子供だぜ?」 「…金太が強いのは認めるけど、優しいのと良い男なのは、間違いよ」 「何だと!」 「何よ!」 「お父さん、お母さん、けんかしないで」 .
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