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※夕暮れ時の街角。正月休みも終わり、慌ただしく動く人影。時折北風が唸り声を上げて吹き抜けてゆく。おや、あそこで猫たちが寄り合いをしていますね。寒そうに体を丸めて、数匹の猫たちがじっとしています。路地の街灯が一つ二つと灯り始めました。まだまだ日が短いですね。
確かこの辺に八兵衛さんのお店があるはずなんですが。彼は、「ぶんぶくオカマ」という店を持っているんですよ。なんと八兵衛さんは、八畳敷きという立派なあれを取っちゃいましてね、すっかり女性になりきっているんです。昔は、八っあん、なんて言われていたのが、今や八姉さんですからね。
おや、あそこに、大きな狸の置物がありますね。むむ、この狸の置物にも、あれが付いていませんね。
「あぁら、ぬらさんじゃないの。よくいらしてくださったわ」
「この辺りに八っあん、いや八姉さんの店ができたって聞いたもんだからね。ちょいと見に来たんですよ」
「あら、そうなの。嬉しいわ。ぬらさん、この娘、ポン子ちゃん。こっちが、花美ちゃん。よろしくね」
「知ってますよ、昔あのいたずら小僧・・いや、おてんばだった」
「ぬらさん、ごひいきにしてね」
「そうですね、またヒマを見付けて来ましょう。なかなか、店の感じもいいしね。床のジュウタンもふわふわだし」
「あら、気に入ってくれた。それ、昔は私のあれだったのよ」
「八畳敷き!?」
さて、次は、キツネの愛菜さんのやっているキャバクラとやらにでも行ってみますか。静かに夜は更けていきます。
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